Hi-STANDARD(ハイスタンダード)の作品をアルバム単位で聴き比べるなら、筆者の場合は『MAKING THE ROAD(メイキング・ザ・ロード)』(1999年リリース)に思い入れがあり、一番好きでもある。巷のハイスタフリークはどう評価しているだろうか。
90年代のHi-STANDARDのアルバム
筆者の場合、10代の頃に『MAKING THE ROAD』からハイスタを聴き始めて、次に『Love is a Battlefield』(2000年リリース)がリリースされた時にそれを聴いて、そこから『ANGRY FIST』(1997年リリース)、『GROWING UP』(1995年リリース)、『LAST OF SUNNY DAY』(1994年リリース)と遡って聴いて行った。
1stの『LAST OF SUNNY DAY』の時から新作がリリースされる毎にチェックしていた早い時期からのファンがいる一方で、自分と同じような順序を辿ったファンもけっこういるかと思われる。
振り返ると1994年の『LAST OF SUNNY DYA』リリースを皮切りとして、1995年、1997年、1999年、2000年と立て続けに、これだけの傑作集を作り上げたハイスタには、改めて驚かされる。
一般的に『MAKING THE ROAD』はハイスタの最高傑作との呼び声の高い作品であるが、肌感覚では『GROWING UP』こそ最も傑作であると推すファンも一定数いるような気がする。
『ANGRY FIST』は多数の名曲を収録しているにも関わらず、不思議とこれを最高傑作と呼ぶ声をあまり聴いたことがない。
時系列で考えると、『GROWING UP』で既に日本のメロディックハードコアの到達点であり、『ANGRY FIST』で完全にシーンの王者の座を周知せしめ、『MAKING THE ROAD』で到達点の向こう側に新たな最高峰を打ち立てた。この快挙は未だに破られていない、といった感じだろうか。
また『ANGRY FIST』のリリースまで、ハイスタが設立したPIZZA OF DEATH RECORDSは、TOY’S FACTORY(トイズファクトリー)のレーベル内レーベルであったが、後に移籍してハウリング・ブルのレーベル内レーベルとなり、更にそのあと完全に独立したインディーズレーベルとなった。
そのインディーズレーベルのPIZZA OF DEATH RECORDSからリリースされたのが『MAKING THE ROAD』であった。大手レコード会社の力に頼るばかりでなく、自ら作り上げるそのDIY精神もまたハイスタが支持された要因であろう。
『MAKING THE ROAD』の収録曲について
筆者は専ら国内盤の『MAKING THE ROAD』を愛聴して来たが、もし『MAKING THE ROAD』収録曲で最も推しの3曲を選ぶとするならば、トラック2「STANDING STILL」、トラック16「NOTHING」、トラック19「BRAND NEW SUNSET」を選ぶ。
わかりやすいところを言うならば、トラック6「STAY GOLD」はハイスタの代名詞的アンセムとしてあまりにも有名であり、トラック5「DEAR MY FRIEND」は名曲中の名曲と言っても過言ではなく、トラック17「MOSH UNDER THE RAINBOW」はライブのクライマックスで重要な役割を持つマーチングソングである、ので或いはこの3曲を選ぶのもまた妥当であるかもしれないが、このように選ぶとなんとなく少しミーハーな感じがしないでもない。
オープニングのファストインストナンバー「TURNING BACK」の勢いから更にトップギアに入れる「STANDING STILL」は、エモーショナルに疾走するギターリフから始まり、感傷的な詩を乗せて駆け抜ける。このトラック1、2が、最高傑作の名に相応しいアルバムのオープニングをセンセーショナルに飾っている。
アルバム後半にかけての、トラック14「LIFT ME UP DON’T BRING ME DOWN」からトラック15「PENTAX」、トラック16「NOTHING」と繋げていく辺りも、勢いを再加速させる流れとして完全に仕上がっている。
「NOTHING」では、イントロでしっとりとエモーショナルなアルペジオが奏でられ、そこから一気に転じて疾走していく。「STANDING STILL」とも相通ずる感傷的な詞に乗せてかき鳴らされる、速度と重厚感を持った音が、聴く者の心を揺らし強く引きつける。
「NOTHING」のパート構成は特徴的で、所謂サビの部分がどこに当たるのかよくわからない。典型的なAメロ→Bメロ→サビと進行する曲とは一線を画しており興味深い。
またラストの「I don’t need nothing~♪」(歌パート)前の間奏が秀逸で、横山健のオクターブ奏法によるギターソロと、恒岡章のクライマックスに向けて盛り上げるドラムフィルインは圧倒的な音楽センスを発揮している。
数多あるアーティストの作品によっては、そのアルバムの中の数曲だけが良く、全体としてはやや物足りなさを感じるような作品も散見されるが、こと『MAKING THE ROAD』においては後半に大クライマックスがあり、作品としての起承転結はドラマチックなラストナンバー「BRAND NEW SUNSET」において、いよいよ大円団を迎えるのである。
なおトラック20には、さざ波の音と共にボーナストラックとして「SEXY GIRLFRIEND」が収録されている。
ウクレレ、ボンゴ、タンバリンだけのアンプラグドな演奏に乗せて歌われる南国チックな曲で、最後の最後にこのような遊び心を盛り込んでくるのも実におもしろい。
written by 南無パンクロック
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