ELLEGARDENはインドネシアでどう聴かれていた?Hammersonic 2026出演と2015年の「虹」のカバー

インドネシアの海岸道路に置かれたスクーターとギターケース ELLEGARDEN
インドネシア
<span class="fz-12px">南無P</span>
南無P

リ―ホー!ニーハオ!南無パンクロック(@NAMUPUNKROCK)です

2026年5月3日、ELLEGARDENがインドネシアのHammersonic Festivalに出演した。

海外のフェスに日本のバンドが出ると、どうしても「どれだけ盛り上がったか」に目が向く。でも、この日のELLEGARDENについて調べていると、その手前にある話が気になった。

インドネシアの人たちは、いつからエルレを聴いていたのだろう。どんな音楽の隣に置いていたのだろう。

その問いに、小さくても具体的な手がかりが見つかった。西ジャワのバンド、Dead Endが公開している「虹」のカバーだ。Bandcampには、2015年4月25日のリリースと記載されている。

Hammersonicのステージよりずっと前に、エルレの曲を自分たちで演奏し、作品に収めたインドネシアのバンドがいた。その事実から、今回の出演を考えてみたい。


インドネシアに残っていた、2015年の「虹」

現地のバンドが、自分たちの作品に収めていた

スケボーのイラスト

Dead Endは、自身のBandcampで「2004年から活動する、Depok出身のインドネシアのパンク/オルタナティブバンド」と紹介している。

その作品『Dibawah Satu Mata』に収録されているのが、「Niji (Ellegarden Cover)」。曲名には、ELLEGARDENのカバーであることが明記されている。

確認できるのは、バンド自身が公開している作品情報と、そこに記載されたリリース日だ。ページがいつ開設されたかまでを示すものではないが、現地の演奏者によるエルレ受容の具体例として興味深い。Dead End「Niji (Ellegarden Cover)」

もちろん、ひとつのカバーから「インドネシアでは誰もがエルレを知っていた」とは言えない。

それでも、好きな曲を聴くところから、コピーして、録音して、自分たちの作品に入れるところまで進んだ人たちがいたことは分かる。

エルレの曲が、現地のバンドにとっても「自分たちで演奏したい曲」になっていた。

今回の出演を考えるうえで、この距離の近さは大切だと思う。


インドネシアには、ポップパンクを育ててきた聴き手がいる

Pee Wee Gaskinsという、現地のポップパンク

ELLEGARDENが出演した国には、すでに自分たちのポップパンクバンドと、そのファンがいる。

例えば、ジャカルタで2007年に結成されたPee Wee Gaskins。Sony Music Indonesiaの紹介によると、2008年のEP、2009年のアルバム『The Sophomore』などを通じて支持を広げ、ファンは「Party Dorks」と呼ばれるようになった。ファンの活動やSNSも、その広がりを支えていたという。Sony Music Indonesia:Pee Wee Gaskins

Pee Wee GaskinsはHammersonic 2026にも出演している。オーストラリアの音楽メディアEverblackによる現地レポートでは、BurgerkillやDeadSquadとともに、その名前が挙げられている。Everblackの現地レポート

こうした背景を踏まえると、ELLEGARDENを受け止める入口として、地元のポップパンクやロックを聴いてきた経験も考えられる。

疾走するギター、歌いたくなるメロディー、感情を押し出す歌。エルレの音を好きになるための音楽的な親しみは、インドネシア側にも育っていたのだろう。

これはジャンルの親和性についての考察であり、Pee Wee GaskinsがELLEGARDENから影響を受けたと確認できたわけではない。直接の接点として挙げられるのは、先ほどのDead Endによるカバーだ。


前年にも、ELLEGARDENを見る機会が予定されていた

中止になったNANO-MUGEN FES. 2025のジャカルタ公演

今回の出演には、もうひとつ押さえておきたい前史がある。

ELLEGARDENは、2025年5月24〜25日にジャカルタのEcopark Ancolで開催予定だった「NANO-MUGEN FES. 2025」の出演者にも名を連ねていた。当時のBandwagonは、ASIAN KUNG-FU GENERATION、Beck、くるり、KANA-BOONなどとともに、ELLEGARDENの出演予定を報じている。Bandwagonの開催前記事

しかし、ジャカルタ公演は開催直前の5月19日に中止が発表された。

公式発表では、現地のさまざまな課題を踏まえ、観客や出演者に約束すべき環境を整えることが難しいと判断した旨が説明されている。NANO-MUGEN FES.公式の中止発表

つまり、インドネシアでELLEGARDENを見る機会は、前年にも一度告知されながら実現しなかった。

Hammersonic 2026は別の主催・別のイベントなので、振替公演とは呼べない。ただ、前年の出演を楽しみにしていた人にとって、今回の告知が特別な意味を持った可能性はある。

「日本のバンドが海外に出た」という出来事の背景には、観客側の「見られるはずだった時間」もあった。


Hammersonicで、ELLEGARDENはどんな位置にいたのか

ポップパンクやエモと並ぶラインアップ

Hammersonic 2026は、5月2〜3日にNICE PIK 2で開催された。ELLEGARDENが出演したのは2日目の5月3日、Sonic Stageだ。Hammersonic公式発表

出演が発表された時期には、ラインアップの変更もあった。

インドネシアの音楽メディアCreative Discは4月13日、New Found GloryとThe Story So Farの出演中止と、Dashboard Confessional、ELLEGARDENの追加を報じている。Creative Discの報道

この並びを見ると、エルレがどのような聴き手に向けて迎えられたのか、少し想像しやすくなる。

Hammersonicには、メタルやハードコアに加え、ポップパンクやエモを好む人たちが楽しめるラインアップも組まれていた。その中にELLEGARDENが入っている。

実際、Everblackの現地レポートの筆者は、2日目にELLEGARDEN、Knuckle Puck、Hawthorne Heightsを続けて楽しんだことを書いている。これはインドネシアの観客全体の感想ではなく、オーストラリアの記者による体験談だ。それでも、エルレを周囲のバンドと同じ音楽的な流れで楽しんだ一例になっている。Everblackの現地レポート

日本から見ると「海外フェスに出たELLEGARDEN」。会場の聴き手から見ると「自分が好きなポップパンクやエモと一緒に聴けるELLEGARDEN」。その視点でラインアップを眺めると、この出演が少し身近になる。


Hammersonic 2026のセットリスト

dancing dog

ファンが編集する公演情報サイトsetlist.fmには、次の11曲が掲載されている。公式発表のセットリストではないため、同サイトの記録として紹介する。

  1. Supernova
  2. Salamander
  3. チーズケーキ・ファクトリー
  4. カーマイン
  5. The Autumn Song
  6. 風の日
  7. Missing
  8. ジターバグ
  9. Make a Wish
  10. Strawberry Margarita
  11. Marry Me

出典:setlist.fm:ELLEGARDEN/Hammersonic 2026

「風の日」「ジターバグ」「Missing」といった曲に、「チーズケーキ・ファクトリー」「Strawberry Margarita」、そして「カーマイン」が並ぶ。

この記録から読む限り、長く聴いてきた人が親しんだ曲と、近年の曲の両方が入った選曲だ。昔の音源から入った人も、最近知った人も、それぞれの入口につながる曲を見つけられる内容だったと思う。

なお、2015年のカバーで触れた「虹」は、この日の掲載セットリストには含まれていない。過去の受容を示す話と、当日の演奏曲は分けておきたい。


インドネシア語のコメントに見える「待っていた時間」

来場者の余韻と、見逃した人の悔しさ

YouTubeには、投稿者virtualyouthによる「ELLEGARDEN live at Hammersonic Fest 2026 」が公開されている。

そのコメント欄では、インドネシア語で、おおむね次のような声が確認できた。

  • 何年も待っていたのに、直接見に行けなかった。アップロードしてくれてありがとう。
  • 自分も会場にいたけれど、まだ余韻から抜け出せない。
  • チケットを買わなかったのが悔しい。セットリストの曲は全部知っている。

いずれもコメントの趣旨を日本語で要約したものだ。投稿者の国籍や居住地は確認できないため、インドネシア語で書かれた個人の反応として紹介する。

ここで気になるのは、「何年も待った」「曲は全部知っている」という言葉だ。

コメントを書いた人たちの中には、今回の告知で初めてエルレを知ったのではなく、すでに曲を聴き込み、公演の機会を待っていた人がいたことがうかがえる。

一方で、来場できなかった人や、情報が十分に知られていなかったのではないかと考える人もいる。熱心なファンがいることと、公演情報がその全員に届くことは、別の問題なのだ。

このコメント欄だけで現地の人気の規模は測れない。それでも、「インドネシアでどれくらい有名か」という大きな問いを、個々の聴き手の経験に近づけてくれる。

当日のライブ映像

当日の演奏に触れたい人は、こちらのYouTUbe動画(投稿者virtualyouth)を参照してほしい。

ELLEGARDEN live at Hammersonic Fest 2026


公式映像ではなく、観客による投稿だ。撮影位置や録音条件によって伝わる音と反応は変わるため、会場全体の様子を代表する記録とは分けて見たい。


日本とインドネシアのバンドが、お互いを聴く

この話を調べていて、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチこと、後藤正文が書いた文章も印象に残った。

後藤は2025年のNANO-MUGENについて、インドネシアをはじめとするアジアのバンドとの交流の場を作ろうと考えたことが、開催のきっかけだったと説明している。

さらに、ジャカルタのレコード店でThe Adamsの作品に出会い、同じような音楽に憧れてきたのではないかという親近感を持ったことも書いている。後藤正文「NANO-MUGEN FES.2025に寄せて⑤」

これはELLEGARDEN自身の発言ではない。ただ、日本とインドネシアのロックの関係を考えるうえで、示唆に富む話だ。

インドネシアのバンドがエルレの「虹」をカバーする。一方では、日本のミュージシャンがジャカルタのレコード店で現地のバンドに出会い、その音に親しみを感じる。

そうした往来の中に、今回のHammersonic出演も置いてみたい。

現時点で確認できた資料から、インドネシアにおけるELLEGARDENのファン人口や全国的な知名度までは分からない。

分かるのは、現地のバンドによるカバーが残っていること。前年にも出演が予定されていたこと。そして、今回の動画には、長く待っていたと書く聴き手の言葉があることだ。

2026年5月3日のステージの前には、ELLEGARDENを聴き、演奏し、会える日を待っていた人たちの時間があった。

2015年のリリース日が記された「虹」のカバーを聴いてから、Hammersonicの演奏に触れてみる。その順番なら、この日のライブが、少し違って聞こえるかもしれない。


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最後までお読みいただき、ありがとうございました!

written by 南無パンクロック 

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