
リ―ホー!ニーハオ!南無パンクロック(@NAMUPUNKROCK)です
ELLEGARDENの台湾での活動を調べると、2019年の「FireBall Fest. 火球祭」や、2023年の台湾初ワンマンが目に入る。
ただ、この二つだけでは、その前にあった時間が抜け落ちてしまう。
ELLEGARDENが台湾で初めてライブをする何年も前から、細美武士は台湾のミュージシャンと交流していた。その中心の一つにいたのが、高雄出身のパンクバンド、滅火器 Fire EX.と、ボーカル/ギターの楊大正(Sam)だ。
一緒にツアーを企画し、曲を書き、台湾の歌を日本語で届ける。そうした活動をたどると、ELLEGARDENの台湾公演も違って見えてくる。
自分もELLEGARDENをリアルタイムで聴いてきたし、台湾の音楽も追っている。今回改めて調べて面白かったのは、交流の長さだけでなく、二人が実際に一緒にやってきたことの多さだった。
2013年の大港開唱に、細美武士と滅火器の接点がある
話を遡るうえで重要なのが、台湾・高雄の音楽フェス「大港開唱 Megaport Festival」だ。
大港開唱公式の過去の出演者一覧には、2013年の出演者として細美武士と滅火器が並んでいる。当時はELLEGARDENの活動休止期間。細美は弾き語りで出演していた。
ここを交流の起点とする根拠は、出演者一覧だけではない。2019年の火球祭出演時に行われたMeMeOnのインタビューで、細美自身が、2013年の大港開唱に出演した頃から滅火器と友人になったと振り返っている。記事の公開は2020年だが、取材は2019年の公演時のものだ。
滅火器側の記憶も重なる。2026年のBlowのインタビューでも、2013年の大港開唱で細美と知り合ったことが、日本のパンクシーンとの関係を深める重要な出来事として紹介されている。
滅火器は2012年にSUMMER SONICにも出演しており、日本の音楽シーンとの接点は2013年以前からあった。
しかし、2013年の大港開唱で細美武士と知り合ったことは、その後の交流を考えるうえで重要な出来事だった。この出会いが、のちのFar East Unionや楽曲の共同制作へとつながっていく。
Far East Unionで、日本・台湾・韓国を一緒に回る
交流が具体的な企画になったのが、2015年に始まった「Far East Union」だった。
当時の開催発表では、細美武士とSamが発案者として紹介されている。第1回に参加したのは、日本のMONOEYES、台湾の滅火器 Fire EX.、韓国のTHORNAPPLEの3組だ。
ここで細美が参加していたバンドは、2015年に始動したMONOEYES。ELLEGARDENのアジアツアーではない。
クリエイティブマンの公演告知と韓国側主催者Mint Paperの記録で、第1回の日程を確認できる。
| 日付 | 都市・会場 |
|---|---|
| 2015年9月12日 | ソウル/KT&G Sangsang Madang Live Hall |
| 2015年9月13日 | 台北/新光三越・信義新天地A11館6階文化館 |
| 2015年9月17日 | 東京/新木場STUDIO COAST |
3組がそれぞれの土地へ行き、同じツアーを回る。その意図は、開催に寄せた細美のメッセージにもはっきり出ている。
もっと隣の人のことを知りたい。
出典:Far East Union Vol.1開催に寄せた細美武士のメッセージ
その先に書かれているのは、テレビやインターネットを通した理解だけでなく、直接会い、音楽や互いの暮らし、未来について話したいという考えだった。
台湾を訪れた際、滅火器と語り合った夜に、このイベントの開催を約束したとも記されている。親しくなった相手と、今度は互いのライブの現場を共有する。Far East Unionは、そのための具体的な方法だった。
「Don’t You Fight」と「この島の夜明け」――交流が作品になる
「Don’t You Fight」は、作詞・作曲とも楊大正と細美武士
2016年、滅火器は「Don’t You Fight feat. 細美武士」を発表する。
この曲で確認しておきたいのは、細美がゲストとして歌っているだけではないことだ。滅火器公式YouTubeのMV説明欄には、作詞にも作曲にも「楊大正 Sam Yang、細美武士」と記されている。
「Don’t You Fight」は、二人が歌詞と曲の両方を共同で作った楽曲だ。
公式の説明によれば、滅火器にとって、初めて歌詞をすべて英語で書いたオリジナル曲だという。MVは2016年3月24日公開。同年のアルバム『REBORN』に収録され、6月8日には日本盤も発売された。当時の台湾の発売記事でも、共同作詞・作曲と全編英語への挑戦が紹介されている。
同じイベントに出演するだけでなく、一曲の作詞・作曲クレジットに二人の名前が並ぶ。細美と滅火器の関係を知るなら、この曲は外せない。

曲良し!歌良し!
台湾の歌を日本語で届ける「この島の夜明け」
もう一つ重要なのが、滅火器の「島嶼天光」の日本語版「この島の夜明け」だ。
原曲は2014年の台湾のひまわり学生運動と深く関わる楽曲で、運動に参加した学生たちからの依頼を受けて作られた。日本語版は、2016年の日本盤『REBORN』に収録されている。
ここには、前年からの流れがある。2015年9月17日のFar East Union日本公演レポートによると、細美は滅火器が演奏した「島嶼天光」の背景を紹介し、歌詞の日本語訳を朗読していた。
まず、ライブの場で歌の意味を伝える。そして翌年、日本語で歌われる録音作品が出る。この順番で見ると、「台湾のバンドと共演した」というだけでは見えなかった関わり方が分かる。
BARKSのライブレポートでは、「この島の夜明け」の日本語詞を細美が付けたと紹介されている。一方、2024年のSamとHUSKING BEE・磯部正文の対談には、録音時、磯部が日本語とメロディーの合い方を調整し、仮歌を入れたという話もある。
細美の日本語詞を、実際に歌う作品へ仕上げる過程には、ほかのミュージシャンも関わっていた。日本語版の制作にも、滅火器と日本の音楽家たちとの具体的なやり取りが残っている。
同年のFar East Union Vol.2台湾公演のレポートでは、「Don’t You Fight」に細美が参加し、「島嶼天光」もSamと日本語を交えて歌ったことが記録されている。共作した曲は、録音だけで終わらず、その後の共演にも持ち込まれていた。
2019年の火球祭で、ELLEGARDENとして台湾へ
そして2019年11月23日、ELLEGARDENが「FireBall Fest. 火球祭」に出演する。
この年の火球祭は、11月23・24日に桃園國際棒球場で開催された。滅火器が企画の中心を担うフェスで、初開催は2017年。2019年が第1回というわけではない。
FireBall Fest.公式Facebookの出演告知は、ELLEGARDENの台湾初登場を明記している。Billboard JAPANの現地レポートでも、台湾初ライブであり、2018年の活動再開後初の海外ライブだったことが確認できる。
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この出演と、それ以前の交流は、単に時系列が前後しているだけではない。
前述のMeMeOnのインタビューで細美は、2013年から滅火器と交流してきたことを説明したうえで、ELLEGARDENの活動再開後、友人の音楽祭だから出演したいと思ったと話している。
細美個人が重ねてきた交流が、ELLEGARDENとして台湾へ行く理由の一つになった。 この部分は、本人の言葉で確かめられる。
同じ火球祭には、翌24日にMONOEYESも出演している。Far East Unionを一緒に回ったMONOEYESと、活動を再開したELLEGARDEN。その両方が滅火器のフェスに参加した年だった。
細美は当時、滅火器のメンバーと兄弟のような関係だとも語っている。ただ、その言葉だけを取り出すより、合同ツアーや共作を先に知った方が、なぜそう呼び合うのかが伝わってくる。
2023年、Zepp New Taipeiで台湾初ワンマン
2023年11月25日、ELLEGARDENは「Boys are Back in the East Tour 2023」でZepp New Taipeiに立った。会場は新北市にあるライブハウス。2019年のフェス出演を経て、今度は台湾で初めてのワンマンだった。
日付と会場はELLEGARDEN公式の公演履歴にも残っている。
この公演に向けたKEEDANのインタビューで、細美が振り返ったのは、やはり大港開唱だった。
ELLEGARDENの活動休止後に弾き語りで出演したこと。そのとき、観客が一緒に歌ってくれた光景を忘れられないこと。そして今回の単独公演では、当時への感謝を伝えたいということを話している。
台湾初ワンマンの話を聞かれて、答えが活動休止中の弾き語りへ戻る。本人の中でも、ELLEGARDENとしての台湾公演は、それ以前の経験とつながっていた。
翌日の火球祭で、滅火器と細美が「Make A Wish」を歌う
ワンマンの翌日、2023年11月26日には、別の形での共演があった。
樂天桃園棒球場で開催された火球祭の滅火器のステージに、細美がサプライズで登場。そこで演奏されたのが、ELLEGARDENの「Make A Wish」だった。Blowの開催後レポートに、出演の経緯と曲名が記されている。
ここは、ELLEGARDENの4人が火球祭に出演した場面とは区別したい。滅火器の演奏に、細美がゲストとして加わったステージだ。
実は、2016年のFar East Union台湾公演にも、細美が「Make A Wish」の一節を歌った記録がある。曲を通しての演奏と短い歌唱は同じではないが、ELLEGARDENの歌も、活動再開前からこの交流の場に顔を出していた。
2016年には滅火器の作品を一緒に作り、2023年には滅火器のステージでELLEGARDENの曲を演奏する。誰かが一方的に紹介されるだけではない、曲の行き来がある。
2024年以降も、公演の外と中で交流が続く
その後の動きを見ても、2019年や2023年だけの共演では終わっていない。
MTV台湾の報道によると、2024年9月11日に行われた滅火器の東京公演には、細美も足を運んでいる。ここで報じられているのは来場であり、ゲスト演奏ではない。
2025年4月20・21日には、FEEDERとの「Sonic Bridges Tour 2025」でELLEGARDENが台北のSUB Live Houseへ。さらに11月22日には、ELLEGARDENとして再び火球祭に出演した。前年は細美の体調不良で出演を取りやめており、2025年はその翌年のステージになった。
そして2026年、滅火器が長年の活動を振り返るインタビューでも、2013年の細美との出会いが語られている。最近の公演情報だけでなく、双方が過去を振り返る言葉にも、この関係の長さが表れている。
ELLEGARDENの台湾史には、活動休止中からの続きがある
2019年の台湾初ライブを入口にすると、それ以前の細美武士と台湾の関係は見えにくい。
けれど、2013年の大港開唱、2015年のFar East Union、2016年の共同制作を順に追うと、火球祭や台湾ワンマンの前に、ずいぶん具体的な積み重ねがあったことが分かる。
共演する。互いの土地へ行く。歌詞と曲を一緒に作る。相手の歌を自分の言葉で届ける。ELLEGARDENの台湾での活動を考えるとき、こうした細美と滅火器の繋がりを外すことはできない。
「6月9日はなぜ『ロックの日』?STANCE PUNKSからELLEGARDEN、台湾へ」では、この関係を短く紹介した。今回はそこから遡ってみたが、公演の名前だけを見ていたときより、一本に繋がって見える。
日本のメロディックパンクを聴いてきた自分には、よく知る曲やバンドの名前が、台湾のバンドの活動の中にどう現れるのかが、観ていて面白い。その視点は、ELLEGARDENとインドネシアの関係を調べた記事にも通じる。
ELLEGARDENの台湾との関係は、台湾初公演の日に突然できたものではなかった。その前から細美と台湾のバンドマンたちが一緒に続けていたことが、今の公演や作品の背景にある。
※公演・作品情報は2026年10月4日までに確認した公開資料に基づきます。中国語掲載インタビューの発言は、原文の趣旨を日本語で要約しています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
written by 南無パンクロック

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